1.最近気になっているWEBのキャンペーンやサイト、サービスを教えてください。
最近、analog on the digital technologyというキーワードを意識して仕事をしています。デジタル・テクノロジーの上に、いかに人間的なアナログな感覚を残すかというこだわりです。最近やらせていただいた、JUJUというアーティストの「素直になれたら」という楽曲のPVやモバイル用ドラマ「ペアムービー」なんかも、この視点を強く意識してつくりました。2台の携帯を並べてドラマ視聴するわけですが、例えばこの2台の動画の同期には、あえてBluetoothなどの技術を採用せず、「せーの!」という人間のコミュニケーションに委ねるようにしました。2人でタイミングを合わせて見る行為自体が表現の一部であり、コンテンツをより楽しむための要素に出来ると考えたんです。
WEBをはじめ、デジタル技術を追求していくと、自然と技術や仕組みから企画を考えるようになります。これは別に悪いことではありませんが、やはり仕組みや技術だけでは、なかなか人の心は動かないと思います。そういう意味で、便利とHappyの差を常に意識するようにしています。この企画は誰かをHappyにしているのか?誰のどんな感情を揺さぶるものなのか?と。WEBがここまで発達して、当たり前の存在になった今だからこそ、便利の先にあるべき幸せや感情を、改めて意識することが重要だと思うわけです。まともすぎて面白くないですね・・・。
まぁそんなの中、この「A Blind Call」というキャンペーンは本当にすばらしいと思います。ベルギーで行われた携帯電話を使ったキャンペーンで、日常にあるちょっとしたマイナスな行為をアイデアだけで、プラスに変換してしまったキャンペーンです。 もしかしたら皆さんも1度くらいは経験しているかもしれませんが、携帯をポケットなんかに入れていて、なんかの拍子に電話帳の最初の人に、知らないうちに電話をしてしまった、なんてことないでしょうか?友達に青木さんや青野さんという苗字の方がいたらぜひ聞いて見てください。きっと電話に出ても「がさがさがさ」という音だけが聞こえる電話が、よくかかってくると言うと思います。
「A Blind Call」というキャンペーンでは、このちょっとしたことを利用しています。仕組みは極めてシンプル。「A Blind Call」という名前で、電話番号を登録して下さい、というだけのキャンペーンです。英語ですから「A Blind Call」というのは、まぁほぼ間違いなく、電話帳の一番上にきますよね。そして、もし間違ってこの電話番号に電話をかけてしまうと・・・実はこの電話番号が、目の見えない方々へのドネーションになっているわけです。・・・すごいと思いませんか? 考えた人天才だと思います。これはもう「やられた・・・」嫉妬します。
日本では多くは折りたたみ形式の携帯が多いので、少し難しいかもしれませんが、海外では日本と異なり折りたたみの機種が少ないので、実際にこのキャンペーンで多くの寄付が集まったとのことです。
すごいのは、特別なテクノロジーなんて一切使っていないということです。ただある電話番号を自分の携帯電話に登録するだけですから。日常にある、ちょっとした問題を、アイデアによって、解決。一転して、良い行為に変えてしまっています。恐ろしいほどシンプルなキャンペーンですが、本当によくできています。これがWEBキャンペーンと言えるのかは不明ですが、とても刺激になったキャンペーンだったので、1-click Award に応募する方には、ぜひ知っていただきたいと思いご紹介しました。
それからもう1つは、「Cymbolism」というサイトです。これは自分の趣味と言ってもいいかもしれませんが、僕は「色」というものが大好きなんです。純粋に「色」が好きなんです。
完全に話が脱線しますが、僕、結構よく音楽CDを買うんですが、音楽を聴くためにあんまり買わないんです。意味わかんないですよね。未開封のものもたくさんあるんですが、棚に並んでいるCDで、グラデーションを作りたくてCDを買ったりしてます。いや、アホかと思うかもしれませんが、これが意外とキレイで、たまに眺めていると、結構やる気出るんですよね・・・。最初は自分が好きなピンク色だけを集めていたんですが、だんだんエスカレートしていき、最近では大変なことになっています。
まぁ、そんな話はどうでもいいですね。話を元に戻すと、この「Cymbolism」というサイトは、言葉から連想される色をユーザーに投票させ、グラフ化するサイトです。例えばこのサイトにアクセスすると、「Government」という単語が表示されていて、右側にあるいくつかの色の中から、この言葉で想起する色を選択する仕組みになっています。回答すると次の単語が出てきて、これをくりかえしていきます。Strongは? Happyは? という感じです。 このサイトが面白いのは、世界中の人が参加していることで、国や性別で、単語の持つ色の印象の違いがわかることです。同じ単語でも国によって連想する色が異なるなんて、面白いと思いませんか?
色はコミュニケーションのマテリアルとして、とても重要です。言葉が纏っている色についての集合知、集合認知といったほうがいいですかね? それがわかるなんて、とても素敵です。
────なるほど。ありがとうございました。
2.広告を作るときに気をつけていることを教えてください。
「妄想力の解放」でしょうか。自分の作った広告コミュニケーションが世に出て、生活者と接する瞬間のシーンや感情をできるだけ詳細に、そして具体的に妄想するようにしています。誰が見るのか、どうやって見るのか、いつ見るのか、どんな気持ちで見るの、誰と見るのか、見てどんな気持ちになるのか、その人はどんな性格で、どんな洋服を着ていて、見た後に何をするのか、誰かに話すのか、後から思い出すのか、、、、妄想は尽きないわけです。極端に言えば、企画の初期段階では、ある特定の1人が動くかどうかの妄想からはじめたりします。例えば、友人のA君が100%動くアイデアとは何か? そんな切り口からアイデアを考えたりします。もちろん最終的にA君にしか機能しないキャンペーンになっては意味がないので、少しずつターゲットの範囲を広げていくわけです。後は少なくとも自分自身が客観的にその広告コミュニケーションに接したとき、動くか!? ということは何度も自問自答しながら企画するようにしています。自分が動かないキャンペーンで、人が動いてはくれないですからね。
そして最も大切なことは、単に新しいとか、単に面白いということではなく、広告としてきちんと役目を果たせるか、つまり結果が出る広告になっているかを意識し続けることではないでしょうか。僕は作品をつくっているわけでなく、広告のプロとして表現しているわけなんで。
────そう考えるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけと言われても困りますが、当たり前のことですよね。広告は人を動かすことを期待されて、クライアントはお金を出しているわけですから、プロとしてはそこを考えないわけにはいきませんよね。やはり「作品」ではなくて「広告」を作っているので。もちろん常にいいものをつくりたいという欲求は強いですが、その仕事を作品として評価されたいかというと、そこにはまったく興味がないわけです。
語弊はないように補足すると、クリエーターとして表現のディテールにこだわる情熱を否定するつもりはまったくありません。むしろ僕もよくこだわりすぎて、スタッフから嫌がられることがあります。見た人がそのディテールに気づくんだったら、どこまでもこだわればいいと思いますし、神は細部に宿るなんて言葉は、本当にその通りだと思いますし。ただ、やはり僕は芸術家ではないので、表現のみに極端に力点を置くというのもバランス悪く、それなら違うところに力を割いたほうがいいと思うことも少なくないというわけです。いずれにせよ、接した人が何を感じるか、最終的に人を動かす力が宿っているかどうかが、全てだと思っています。
3. 1-click Awardで「こんな作品が見たい!」 というものは何でしょうか?
アイデアの先にある魅力が光っているものがいいですね。「面白さ」「人に言いたくなる力」「エモーショナルに人を動かす力」ときには「いじりたくなるスキみたいなもの」そういった"人を動かすパワー"を感じるものを期待しています。仕組み」も大切ですが、それ以上に「気持ち」を大切にしてほしいと思います。単に便利なサービスを考えるのではなくて、それで何が起こるのか、誰が幸せになるのかを見つめて企画してほしいと思います。
WEB系の企画は、どうしても技術や仕組みからアイデアを考えがちになりますが、ご自身の企画が、仕組みではなく気持ちをデザインできているかを意識するといいと思います。例えですけど、最近よく「続きはWEBで!」というWEBへの連動をテレビで見たりしますよね。でも、それを見ただけでは、決してWEBまで人はいかないわけです。もっと見たい、もっと知りたい、という気持ちがない限り、どんなに「続きはWEBで!」と叫んでも、誰も続いてくれないわけです。つまり「続きはWEBで!」というのは仕組みでしかないわけで、その先の気持ちが、いかにデザインできているかが重要になるということです。ご自身の企画が、人の気持ちを動かしているのか?そんなことを強く意識すると、いい企画になると思います。
後は、個人的な嗜好もありますが、人が笑ったり、幸せになったり、キュンってする企画が好きなんで、そういうアイデアは楽しみですね。
今年審査員をお引き受けするのに際し、昨年グランプリを受賞された「RAIN MAKER」の企画書も拝見しましたが、雨を降らすというアイデアも、もちろん面白いのですが、例えばその先に、雨によってできた虹をみんなで見て、そこに住む全ての人が元気になるような、エモーショナルな絵まで妄想して企画されていると、さらに素敵になったのではないかと思います。まぁこれは個人的にそういうのが好きって話だけですが。
────ターゲットは仕事によって毎回変わってくると思うのですが、
ターゲットの気持ちになるための情報収集はどのようにやっているのですか?
ターゲットインサイトはもう、徹底的にやっていますね。あらゆるターゲットに対してイタコのように、ターゲットに乗り移った感覚で企画することで、様々なキャンペーンに対応しています。そういう意味で日々の情報収集は熱心にやっています。日常的にやっていることといえばなんでしょうかね?まず雑誌はよく読みます。特に女性誌は意識して読むようにしています。10誌以上を自分で年刊購読して読んでます。ちなみに最近ハマッているのは「小悪魔ageha」、これは抜群に面白いです。視点も言葉も非常に切れ味よくて、すごく勉強になります。
あとは、なんでしょう。RSSを使ってですが、かなりの数のサイトを毎日読んでいますね。日本以外のサイトもあわせて1,000サイト以上はカバーしています。もちろんキーワードでフィルタリングして、広告やメディアに関係する記事やニュースのみを中心に読んでいるので、全部のサイトを毎日きちんと読んでいるわけではありませんが、新しい技術やメディアの情報なんかを収集するうえでは重宝していますね。
4.では、最後に応募者へのメッセージをお願いします。
最終的にはなんでこんなに単純なこと、今まで思いつかなかったんだろうと思えるくらい、シンプルなアイデアができたら、素敵だと思いますね。よくひらめいたな、と驚かされるような企画を楽しみにしています。
それから「プロセスにプレジャーを」もって挑んでいただければと思います。この言葉は、弊社の常務で、日本を代表するクリエーターとして活躍してきた杉山恒太郎が、ある仕事で僕にアドバイスしてくれた言葉です。今回はアワードですから皆さんにとっては、結果が重要だと思います。でもそれ以上に考えた時間やプレゼンが楽しかったと思ってほしいということです。極端に言えば。審査員が理解できないくらいの企画でもいいじゃないですか。「とにかく自分はこれが面白いと思う!」そんなふうに思えるものを、堂々とエントリーして欲しいと思います。審査で評価するかどうかは別として、その想いは僕らには伝わると思います。そして、そんな気持ちでエントリーすれば、きっとそれだけで、1-click Award は価値のあるものになると思います。ぜひプロセスにプレジャーを感じて、素敵な企画を考え抜いて下さい。皆様からの素敵なアイデアを楽しみにしています。