審査員インタビュー

嶋浩一郎

広告でのコミュニケーションを考える上で、大切にしていることは何ですか?

ただ情報を伝えれば良かった昔の広告とは違って、今の広告は、人に何らかの経験を与えて、人の時間をいただくものに変わってきています。だから、広告は人を満足させる必要があると思います。たとえば、「続きはwebで」と言っておきながら、アクセスしてみたら物凄くつまらなかったとしたら、そのブランドや製品まで嫌いになってしまう可能性があります。昔の広告は、ただ伝わるか伝わらないかが重要でしたが、今では、そのブランドや製品が好きか嫌いかまでが、広告で左右されてしまいます。ですから、クリエイターやプランナーの負う責任は、非常に重くなってきていると感じます。

また、何かキャンペーンを行うにしても、そのキャンペーンに参加してもらうための"動機"がとても重要になります。たとえば、『迷子になったペットを探してください』という趣旨のキャンペーンがあったとしても、「そんなもん、探さねーよ」と言われるだけです。また、たとえば『クリスマスツリーを点灯させよう』というキャンペーンがあったとしても、きちっとしたシナリオがなければ、「何でそんなことしなきゃいけないの?」と思われてしまうだけだと思います。なぜなら、そこには参加する理由が全くないからです。リアリティを持って考えると、何の動機もないものに参加する必要はまったくありません。

Twitterを使った企画でも、そもそもなぜツイートしなくてはならないのかという、使う人の気持ちが全く考えられていないイマイチな企画が見受けられます。最近はソーシャルにおいても様々な使い方の"型"ができてきたので、型の模倣に走るものが今後さらに増えてくると思いますが、大切なのは型よりもアイデアです。TwitterやFacebookがあるからバイラルするのではなく、人に話したくなるような面白いネタがあるからバイラルするのです。現在の広告にはこうした課題もありますが、マス媒体に載せる以外に広告の手段がなかった頃と比較すると、テクノロジーが進化したことで、できることが増えているともいえます。面白いことを考えられるクリエイターやプランナーにとっては、非常に面白い状況だと思いますよ。

1-click Awardへの出品にあたって、企画書にまとめる際のポイントを教えてください。

多くのページ数は必要ないと思います。いい企画であればあるほどシンプルにまとめられますから。"こんなサービスがあったら、こんなふうに楽しめる"というアイデアだけで十分です。余計な説明をつけないと伝わらないのであれば、それは良い企画なのかどうかを疑った方がいいと思います。例外もあるのかもしれませんが、基本的にはダメだと思います。僕が企画書をつくるときの話をすると、紙芝居形式で話を展開していきます。ターゲットとなる人物の日常生活を時系列で紹介することで、何が起きて、どうコミュニケーションに巻き込まれていくのかを、受け手となるターゲット側の立場からプレゼンしています。

締切直前のチェックポイントがあれば、教えてください。

自分がその企画をつくったはずなのに、その企画が実際にあったとしたら、やらない。そんな人が実はたくさんいます。紙の上で企画書をつくってしまうから、本当に紙の上だけの企画になってしまうんです。だから提出前に、インサイトを掴めている企画なのかどうか、自分自身がチェッカーとなって確かめるといいと思います。"自分なら、こんなサービスを本当に使うのか?"と。企画書上の企画に酔い始める人がいますが、それは企画書をつくったことで、企画ができたように見えているだけです。最後まで、自分自身がリトマス紙となって確かめることを忘れてはいけないと思います。

その1 言語化できていない欲望を捉える。